
演劇女子部「図書館物語〜3つのブックマーク〜」
過去(PAST)編・現在(NOW)編・未来(FUTURE)編に分かれており一回の上演で2つのエピソードを見るので2回観る事で3つ全ての物語を知ることができます。
私は11月14日(日)の1回目(現在/未来)と3回目(未来/過去)の上演を観ました。
登場人物やあらすじなどは公式ホームページをご覧ください。
以下はネタバレ含む偏った個人の感想です。
それぞれの時代、少女(少年)達は青春を懸命に生きています。
過去編では少女達が封建的な「大人・男性」社会に抵抗し、現代編では自信の持てない少女の成長を願い、未来編ではコンピューターに支配されることなく自分の意思で恋を求めて。
それぞれを演じたハロプロ研修生の皆さんですが演じたキャラクターの中には本人の個性に寄せた「当て書き」が感じられるのも演劇女子部の定番です。
過去編での真面目で優しい生徒会長「夏目薫」はリアル世界でもやっぱり真面目で優しい小野田華凜さん、先鋭の新聞部長「宮沢文子」はファンクラブイベントなどでハッキリとした意思表示と大胆な発想でお馴染みの米村姫良々さん。
現在編での探偵「綾辻深月」は明晰で自己プロデュースに長けた北原ももさん、探偵助手「東野りさ」はファンにもそのパフォーマンス力を認められていながらも、自身の真面目さからラジオなどの発言に消極的な言葉が時折見える平山遊季さん、演劇部のボクっ子「伊坂しをん」は加入当初からそのビジュアルで一定層から特に強い支持を得る吉田姫杷さん。
未来編では天才発明家「コナン」を全方位にスキル万能で研修生からも尊敬される石栗奏美君(さん)、主役に抜擢されながらも自信の持てない演劇部員「朝井夏生」を研修生ユニットとしてデビューの道筋が見えた所信表明ブログで自らを「ポンコツ」と評した斉藤円香さん。
ファンがよく知っている人物像が少なからず物語に反映されているので、さらにイマジネーションが膨らむという妄想系ヲタクの醍醐味を味わいました。
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この舞台、メインストーリーは
- 【過去】「小説・図書館物語の誕生」
- 【現在】「探偵助手・東野りさの成長」
- 【未来】「コナンが自らの意思で恋心を遂げる」
と、それぞれの願いは成就しました。
公式のイントロダクションにもある通り、時代を超えて「図書館物語」という一冊の本でストーリーは繋がっていますが、並行してもうひとつ、繋がっている時間の流れがあります。
それは「三島佐和子」→「朝井夏生」→「アガサ」という血族の物語
本編では、過去編で佐和子は壺を割ってしまい、未来編では夏生が舞台本番当日に逃げ出したことが語られています。
佐和子も夏生もその後、ネガティブ因子で不幸になってしまったのでしょうか。特に夏生はアガサが「おばあちゃんから聞いた」と、その後の夏生の人生を話しています。
3遍の物語でアガサだけは「恋の始まり」を享受して幸せが描かれておりますが、佐和子と夏生については本編内でそれぞれ「おばあちゃんが言っていた」と不幸な人生が話されています。
コナンを励ました佐和子の「現実を見る力と強い意志」、夏生の「優しさが服を着ている」という人間性は、はたして伝聞で聞かれるような人生を辿ったのでしょうか。
(夏生が「本当」に本番当日に逃げ出したのかは現在編でも未来編でも描かれていません。)
夏生を演じた斉藤円香ちゃんが好きな私としては暗澹たる想いに囚われそうになりましたが、過去編の中に救いとなるメタファーを感じました。それは「校長先生の夏目漱石評」です。
当初校長は「漱石の小説を酷評しバカにした」という事実が、他人の話では「校長は当初から漱石の才能を見抜いていた」と全く正反対に広まっていたというくだりです。
確かに過去編で佐和子は壺を割りました。そして未来編で夏生は本番前日に自分に自信が持てなく、逃げ出すつもりの発言もしています。そこまでは事実として舞台上で描かれていますが、その後についてはあくまでも「おばあちゃんが言っていた」だけです。
校長の漱石評のように短い時間経過ですら人の話は全くの正反対に伝わるという現象、はたして3つの時代それぞれがおよそ90年の隔たりを持って正確に伝わっているであろうか。
あくまでも「そうあってほしい」という私の願いなのですが…。
(もう一つの未来である天狗グループのお嬢様「陽キャ女王夏生」と「金髪アガサ」可愛かった。)
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演劇という「別人を表現する」ステージ、メンバーそれぞれに多くの経験と学びがあったのではないでしょうか。
未来を夢見るハロプロ研修生、全力で演技に取り組む瑞々しい青春の輝きがそこにありました。
